四つ葉のクローバー(2) 

横顔を見ていたら,三橋がさっと草むらに手を伸ばした。
「四つ葉のクローバーだ!」
「どこ?」
「ほら,ここ,ここ」
草むらの中をさぐっていた三橋が「あ」と小さく声を上げた。
人差し指の横に糸のような赤い筋が走っている。
草で切ったなと思う間もなく,オレはその指を自分の口元に引き寄せて
吸い上げていた。
「あ,あ,あ,阿部くん!?」
指をくわえたまま横を向くと,三橋の顔がみるみる赤くなっていった。
あれ,オレ今何か?えっと…。
ヤベ,弟にもこんなことしたことなかった。
あわてて口を離すと,三橋は俯いていた。
「気ィつけろよ。後でちゃんと消毒しとけ」
「…うん」
そのまま妙な沈黙が流れた。気まずい。

沈黙を破ったのは「ワン!」という犬の鳴き声だった。
リードを引きずった犬がオレ達に向かって,今にも飛びかかろうとしていたのだ。
「うわ~!!」
三橋がすごい勢いでオレにとびつき,そのまま二人で草むらに倒れこんでしまった。
そこへ飼い主が追いついて,犬を引きずって行った。
「コラ!あー,君たちごめんよ。驚かしちゃったね。悪い,悪い」
犬が離れてからも,三橋はオレに乗りかかって抱きついたまま,
ブルブル震えていた。
どんだけ犬が怖いんだ,こいつは。嫌な思い出でもあるんだろうか。
それにしてもこの格好はシャレになんねー。
男同士で…いやいや男女だったとしても,こんな所でこの体勢は!
体を引き離そうとしたが,意思に反して手が動こうとしない。
頬に当たる柔らかい髪の感触が心地いい。密着した体が温かい。
もう少しこのまま。…って,おかしいだろ,それは!!
抱きしめる動きをしそうになった手で,震える背中をポンポンと叩いた。
「み,三橋~。お,重い んだけど…」
やっとのことで搾り出した言葉が,三橋みたいな口調になっちまった。
三橋がガバッと顔を上げた。
「う,ご,ごめんなさい!」
「…もう大丈夫だからな」

体についた草を払いながら,立ち上がった。
「そろそろ帰ろうぜ」
「うん」
「あ,さっきの四つ葉のクローバー,摘んで帰るか?」
三橋は首を横に振った。
「幸せになれるとかいうんじゃないの?」
「オ,オレ,もう幸せだから。西浦で野球ができて。
 阿部くんがオレの球,捕ってくれて。
 今日も,わがまま 聞いてくれて,ありがとう」
こいつのふいのまっすぐには,いつも驚かされる。
不覚にも目頭が熱くなりかけて,腹にぐっと力を入れた。
「三橋ィ~!!」
「へ,な,なに?」
「誕生日おめでとうな!まだ言ってなかった」
「あ,ありがと」
もうすぐ夏が来る。今年は夢を夢で終わらせない。
マウンドに駆け寄ってこいつを抱きしめるまで,きっと。
笑顔の三橋を見つめながら,オレは心に誓った。



無自覚両片思い設定で。
これでアベミハと主張するのはずうずうしいかも;
この後、阿部はコンビニかファミレスで何かおごってあげると思われます。
普段阿部好きを公言して憚らない私ですが、三橋も大好きですvv
気は弱いけど、芯の強い子だと思います。
どんどん成長していく姿に魅せられます。
誕生日、おめでとう!

コメント

早朝にすいません^^;

ssにテンション上がりました!
ちょっともじもじな感じで甘酸っぱい2人が堪りません!!
クローバーを摘まない三橋の言葉にじんときました…!阿部のように「じわ」っとしちゃいますよ~
素敵なお話有難うございます!
また是非別の作品も読ませて頂きたいです(^◇^)

>東風さん
おはよーございますv
わ、東風さん、なんて時間に!?
原稿の合間にコメントくださったのですね。
未熟な文章を読んで下さって、ありがとうございます。
もどかしい二人も好きですが、もっと修行して、ラブラブまで書けるように
なることが目標です。(わー言っちゃった、無理かも無理かも~;)
東風さんの『今度○む』に笑ってしまいました。
あの二人なら何か産めそうな気がするのが怖いです(笑)。

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