ある電話 

プルルルプルルル… カチャ

「はい」
「…もしもし」
「…」
「もしもし。私」
「どなたですか?」
「私よ。母親の声、忘れたの?」
「あの、間違い電話だと思います。私の母は一年前に亡くなりました」
「ふざけないで」
「でも、おばさんの声、亡くなった母によく似てるわ」
「…」
「なつかしいから、少しお話ししましょうよ」
「あんた、私をからかってるの!?」
「そういう声、ほんとそっくり。母はすぐ怒鳴るし、暴力をふるうし、
 嘘ばっかりついてどうしようもない人だと思っていたけど、
 亡くなってみると、いい所も思い出すのよ。
 キャベツの千切りと編み物が上手でね。手先の器用な人だった」
「…」
「おばさんの娘さん?はどういう人なの?」
「…かわいい娘だった。おとなしくて、勉強がよくできて。口答え一つしなかった。
 私はかわいがっているつもりだったけど、通じなかったみたい」
「…そうなんだ。おばさん、この電話は間違い電話だったけど、 
 番号覚えてたら、また電話してね。じゃあ」
「…ええ」

ガチャ



フィクションです。
母から絶縁されて一年だなと思ったら、なんとなく頭に浮かんだことを書きました。