阿部がにゃんこに 

本日2度目。

昨日、黒猫阿部君のことを考えてウキウキしてたら、
好きサイトさんであべにゃん漫画がアップされているのを拝見して、
ウキャー!となった。
それで突発的にあべにゃん小話を書きました。
(イラストとどっち書こうか迷ったけど)
や、ほんとに短時間で書いた、ギャグみたいな小話ですが。

阿部君が猫耳、猫しっぽつけてていい方は続きからどうぞ↓

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春の日の公園で(1) 

梅の花が散り始め,桜の蕾が膨らみだす頃のことだった。
三橋は母に連れられて,母の高校時代の友人の家に遊びに来ていた。
「そう~,もう廉君も来月から小学校なの~」
「そうなのよ。ご近所にいいお友達もできて…」
「でも,あなたも大変よね」
「ええ,よくここまで頑張れたなって思うわ」
母親とその友人のおしゃべりはまだまだ続きそうだ。
遊び盛りの三橋は退屈になって,窓の外を眺めていた。
その家は公園に面していて,休日の今日は子供たちが遊ぶ姿がそこここに見られた。
「お母さん,公園に行ってきていい?」
三橋が聞くと,母はにっこり笑って頷いた。
「いいわよ。遊んでらっしゃい。ここから見てるから」

ジャングルジム,滑り台,シーソー,ブランコ,そのまん中は広場になっていた。
自分より小さい子供は大抵親子連れで,自分と同じ位かもっと上の子供たちは
グループになって,サッカーや鬼ごっこをして遊んでいた。
そんな中で三橋の目は,ボールで壁当てをしている一人の男の子に引き付けられた。
多分自分と同じぐらいの年だろう。
黒い髪,きりっとした眉に愛嬌のある垂れた目が印象的な男の子だった。
壁当てはなかなかじょうずで,いい球を投げているように見えた。
最近近所の子供たちの野球の仲間に入れてもらえるようになった三橋は,
いいなあ,オレもやりたいなあと思いながら,その子を見ていた。

その時,壁に当たったボールがイレギュラーして,三橋の方に転がってきた。
垂れ目の男の子が三橋の方を見た。
三橋はボールを取って,その子の方へ投げた。
ボールはきれいな弧を描いて,その子の手の中に納まった。
「サンキュー」
「うん」
その子はトコトコと三橋のそばにやってきた。
「な,お前,この辺に住んでんの?」
「違うよ。ここは初めて来た」
「野球やったことあんの?」
「あるよ!」
「ふ~ん」
その子はちょっと首をかしげてから,こう言った。
「オレとキャッチボールしない?」
三橋はびっくりして,でもうれしくて,コクコクと頷いた。
「うん!やるよ!」

こうして初対面の三橋と垂れ目の男の子はキャッチボールを始めた。
ポーン,パシッ。ポーン,パシッ。
二人の間を何回もボールが飛び交った。
三橋はうれしくてたまらなかった。
よくやっている的当てよりも,相手がいる方がずっと楽しい。
何十回投げただろうか,息が切れる頃に「休もう」と男の子が言った。
ベンチに腰掛けて,足をブラブラさせながら,二人は話をした。
「お前さ,幼稚園?小学生?」
「四月から小学生だよ」
「オレとおんなじか。小学校行ったら,どっかのチーム入んの?」
「う,わかんない…」
「オレは入るんだ。甲子園行くんだから」
「こーしえん?」
「うん,大きくなったら」
男の子は目をキラキラさせていた。
こーしえんってそんなにおもしろい所なのかな,と三橋は思った。

春の日の公園で(2) 

ふいに,夕方4時を知らせる音楽が鳴り出した。
「あ,帰らなきゃ」
三橋がバイバイを言おうとすると,男の子が頬を膨らませて,
「オレは帰らない」
と言った。
「4時の音楽が鳴ったよ」
「お母さんがオレばっか怒るんだもん。シュンだって悪いのに」
「シュンって?」
「弟」
三橋は兄弟がいてうらやましいと思った。
ケンカしたり,お母さんに怒られるのはイヤだけど。
「じゃ,オレんち来る?」
「えっ……」
もしこの子が来てくれるなら,兄弟がいる子みたいに,
毎日キャッチボールできるんだ。お母さん,いいって言ってくれるかな。
三橋は期待でドキドキした。

するとその時,遠くから「タカー!タカー!」という声が聞こえた。
小さな男の子を連れた女の人がこちらに向かって足早に歩いてきた。
「タカったら,ここにいたの。心配したじゃない。帰るわよ」
小さな男の子も「兄ちゃん,帰ろう」と言った。
この子,『タカ』っていうんだ。
そしてこの二人がお母さんと弟なんだと三橋にもわかった。
「オレ,帰るよ。今日はありがとうな。」
男の子が黒い瞳で三橋をじっと見つめた。
家に来てもらえなくて残念な気持ちもあったけど,
でもお母さんと弟が迎えに来てくれてよかったと三橋は安堵した。
「うん,またね」
「またキャッチボールしようぜ。そうだ,名前なんていうの?」
「えっとね,オレの名前は……」

「…はし。三橋!三橋!」
肩を揺り動かされて,三橋は眠りから浮上した。
「もう昼休憩終わりだぞ。熟睡してんのかよ」
阿部の黒い瞳がこちらをのぞきこんでいた。
「阿部君……」
「何寝ぼけた顔してんだよ。」
遠い昔の夢を見ていたような気がする。とてもなつかしい……。
何故かその気持ちとともに、目の前のこの人に対するいとしさがこみ上げてきた。
「阿部君……。オレ,阿部君に会えてよかった」
「何言ってんの?しっかり目ェ覚ませ。午後も頑張るぞ!」
「うん!」
春の日差しを浴びながら,二人はグラウンドに向かって走り出した。



下の記事等に拍手ありがとうございます。
阿部と三橋が小さい頃会っていたらおもしろいな、
とふと思いついて、突発ss書いてみました。
文章を書くと気持ちが落ち着きます。
ヘタな文章で申し訳ないけど、一人でも楽しんで下さる人がいたらうれしいですv
HARUコミは中止で残念だったけど、もうすぐ選抜高校野球が始まるし、
コミック16巻発売もあるしね。楽しみですv

髪の手触り 

「あ,あの,阿部君」
練習の休憩中,さっきからチラチラとこちらをうかがっていた三橋が
思い切ったように阿部に話しかけた。
「何?」
阿部が聞いたとたんに,三橋はさっと目をそらした。
「な んでもない……」
阿部は心の中でふ~とため息をついた。
打ち解けて心を許してくれているような気がする時もあるのに,
いまだにオドオドとした態度をとられることもある。
二人の距離は近づいたり,離れたり。そのたびに心が揺れる。
(もう少し近づけたらな。でも遠慮がちなところもこいつの可愛さかも。
 …いや,可愛いなんて男に使う言葉じゃないか。)
何故か赤面しそうになった阿部に,三橋がまた話しかけた。
「あの,えっと……」
阿部は待った。自分でも随分忍耐強くなったと思う。
「か,髪に……」
「髪?」
「葉っぱがついて」
「あ?」
阿部は頭に手を当てた。
「そこじゃなくて……」
手の位置を変えてみたが,どこにあるのかわからない。
「三橋,取ってよ」
「え,う,うん」

実は三橋はさっきから取ってあげたくて、
でもそんなことしていいのか、迷っていたのだ。
「取って」と言われて、ゆっくりと手を伸ばし、
そ~っと阿部の髪の毛に指を差し入れた。
(阿部君の髪の毛,柔らかいんだ)
見た目より柔らかくて,すべすべしていて。
よく見ると,黒いと思っていた髪の色は,光に透けて茶色がかって見えた。
(きれいだな)
三橋は優しくなでるような仕草で目的の木の葉に指を届かせた。
阿部の髪の毛を触るなんて,初めてかもしれない。
自分の髪は何度かわしゃわしゃされたりした覚えはあるけど。
このまま手を離すのが惜しい気がした。
でもいつまでもこうしてはいられない。
「取れたよ」
「サンキュな」
阿部がうれしそうにふわりと笑った。
三橋は指先に残る感触を忘れないように手を握り締めた。

そして今。三橋はあの時のことを思い出しながら,阿部の髪をなでていた。
(もうあれから何年経ったのかな)
梳くように指を動かしてみたり,髪の先をつまんでみたり。
つやつやのこの感触が三橋は大好きで,一緒に暮し始めてからもよく触って,
「お前,オレの髪触るの好きだな」と阿部に言われている。
三橋に膝枕したまま,阿部はじっとしていた。
「あ,べ,くーん。寝ちゃったの?」
「ん……」
阿部は返事なのか,寝息なのかわからない声をもらした。
三橋は小さく微笑み,いつまでも阿部の髪をなで続けるのだった。



下2つの記事等に拍手ありがとうございます!
昨夜寝る前に、阿部の髪の毛を触る三橋を妄想してたら、
急に書きたくなっちゃって。超短文ですが。

その手を離さない(1) 

12月初め,初冬にしては晴れ上がった暖かい日だった。
阿部と三橋の二人は鎌倉に向かう電車に乗っていた。
数日前,三橋はもうすぐ阿部の誕生日だから,何か欲しい物があるか聞いてみた。
すると阿部は「お前の誕生日の時と同じがいい」と答えたのである。
それは物じゃなくて『一緒に出かけること』だった。
三橋の誕生日には海へ出かけた。
阿部のことを特別な意味で好きな三橋にとって,今も大切な思い出だ。
阿部の誕生日当日には練習が入っていたので,その少し前の休日に
紅葉狩りに行こうという話になった。
普段練習や試合で忙しく,遊びで出かけることなんてほとんどない生活。
実際五月に出かけて以来,阿部と二人で遊びに行くことはなかったので,
三橋は楽しみで仕方なかった。

「年々紅葉の季節が遅くなっているみたいだから,今頃がきれいなんだってさ」
阿部はネットで調べてきたらしく,プリントアウトした資料を見ながら言った。
北鎌倉の駅で降りると,目の前に見事に紅葉したモミジの木々が見えた。
「きれいだね」
三橋は目を輝かせた。
二人並んで,しばらく真っ赤に色づいたモミジを鑑賞した。
三橋には,誕生日プレゼントが自分と一緒に出かけることだなんていいのかなと
申し訳なく思う気持ちもあった。
でも阿部と二人でいられる喜びはそれを大きく上回っていた。
もしかしたら来年はこんなふうに過ごせないかもしれない。
だったら今の一瞬一瞬を胸に刻みつけようと思った。
鎌倉へ向かう道の歩道は狭くて段差があり,並んで歩けない。
前を歩く阿部の後姿を見ながら,ずっと見ていられたらいいのにと
いとしさが募るばかりだった。
「三橋,落っこちるなよ」
阿部はいつも自分のことを心配してくれる。
そんなところは高校の時とちっとも変わらないなと思った。

しばらく歩くと左側に大きな森が見えた。
地図を見ていた阿部が「鶴岡八幡宮だよ」と教えてくれた。
一度大風で倒れたけれど再生したというイチョウの木を見ながら,階段を上る。
本宮でお賽銭をあげて,お参りをした。
「おみくじ買おっか」
「うん」
阿部は開いたおみくじをしばらくじっと見ていた。
「阿部君,何だった?」
「ん,大吉」
見せてくれたおみくじの『縁談』のところに,『その人を離すな』とあった。
もしかしたら阿部はここをじっと見ていたのだろうか。
「お前のは?」
「吉だよ」
三橋の『縁談』にも同じ言葉があった。
「ここ,同じだね」
「そうだな」
『その人を離すな』 そうできたらどんなにいいだろう。
バッテリーとしてだけでなく,友人としてではなく。

鎌倉駅に向かう途中に小町通りであれこれ食べ歩いたのが,
三橋にとってはものめずらしく,とても楽しかった。
焼きたてのおせんべい,紫芋コロッケ,わらびもち,柚子のソフトクリーム。
ついあれもこれもと目が行ってしまい,阿部に「食べ過ぎんな」
と怒られたが。
混雑を避けて早めに帰途についたので,電車はまだ空いていた。
並んで座ると,阿部とくっついている側の肩や腿が温かさを通り越して,
熱く感じて仕方なかった。
「三橋,今日はありがとうな」
「オレ,楽しかった!」
「オレもだよ」
そばにいられるだけで幸せだ。
三橋は今日のことを心の宝箱にそっとしまった。

翌日,三橋がそれを聞いたのは偶然だった。
「オレ,好きなヤツいるから」
思いがけない言葉が聞こえて,胸がズキンと痛んだ。
講義が終わって,阿部を迎えに来たはいいが,
姿が見当たらず,近くを探し回った。
廊下の角を曲がった突き当たりで後姿を見つけ,声をかけようとしたが,
女子と二人でいるのを見て,反射的に身を隠してしまった。
その時に阿部の声が聞こえたのだ。
(告白…を断っている言葉?)
三橋が回らぬ頭を一生懸命働かせて考えているうちに,話は終わったらしく,
角を曲がって歩いてきた阿部とぶつかりそうになった。
「ああ,三橋。練習行こうぜ」
阿部は何事もなかったように,話しかけてきた。

そして阿部の誕生日12月11日がやってきた。
三橋はこの数日,練習が普通にできたことが不思議なくらい,気持ちが乱れていた。
「好きなヤツいるから」
以前阿部は好きな人はいないと言っていた。
じゃあこの言葉は断るための口実なのか。
それとも,この数ヶ月で好きな人ができたのか。
大学1年にもなって好きな人がいない方が珍しいかもしれない。
「三橋!」
「な,なに?」
「後で残れ。話がある」
なんだろう,話って。いい話でないことは口調で分かった。
他の部員が帰ったグラウンドで,阿部と向かい合った。
「お前,最近どうした?気のない投球はケガの元だろうが」
普通にしていたつもりなのに,阿部には分かってしまうのだろうか。
「オ,オレ…」
「どっか悪いところでもあんのか?」
「…違う」
「じゃ何」
沈黙が続いた。理由を言えるはずがない。
今までひた隠しにしていた気持ちを悟られるわけにはいかなかった。
困らせてしまうだけだから。